2021年10月10日(日)、日本浮世絵商協同組合による第31回浮世絵オークションに参加しました。
・オークションにはどんな作品が出品されるのか
・どういう人が参加するのか
・どんな作品が高く売れるのか
・自分の好みの作品はどんなものか
ということに興味があったからです。
オークションに参加するのは初めてなので、知人である酒井好古堂のご主人と一緒に参加しました(ありがとうございました)。
とても興味深くて面白かったです!
まずはオークションの出品カタログで気になる作品をチェックしました。
自分がチェックしたのはどんな作品かというと、最初は
・歌麿「路考気どりの女房」、歌麿二代「二美人」、小村雪岱「春雨」など最低価格が安い作品
・国貞「市村座楽屋之図」、国芳「嘘と真心の裏表」など内容が面白い作品
・国芳「芝居町繁栄の図」など珍しい作品
をチェックしましたが、少し日数が経過すると
・豊国二代「和国名所 冨士山 全勢揃」
・歌麿「江戸の花娘浄瑠璃」
・英山「風流美人競」
・英泉「花名所東百景 飛鳥山の花・根津権現楓」
・広重「東都名所両国夕すずみ」
・国芳「当世女諸礼躾方 きゃくじんへあいさつの仕やう」
・国芳「弥美能有女」
・芳年「風俗三十二相 むまそう」
など何度も見たくなるだろう作品が気になり始めてチェックしました。以前、映画に関してブログに掲載しましたが、何度も見たくなる作品が「好きな作品(=自分にとっての名画)」だと思ったからです。
さて、オークション前日に出品作品の下見に行き、チェックした作品の実物を見て確認しました。
オークションには人気のある作品で状態の良い物、なかなか出回らない珍しい作品が出品されているように感じました。
実物の作品はカタログで見た時の印象と異なり、実際に手に取って色合いや紙質、状態など確認しないと良し悪しは分からないと思いました。美術展では薄暗い照明でガラス越しでしか作品を見られませんが、オークションの下見や浮世絵専門店では実物を手に取って見ることができるのでとても貴重な機会です。
また、会場には成行品(なりゆきひん)といって、最低価格が1万円から始まる作品が展示されていて、
・歌麿「風流小鳥合 時鳥」
・古堂「教育水族館蟹亀之組立」
が気になってチェックしました。歌麿の作品は古くて小さいサイズですが、蔦屋の印があり興味深いです。古堂の作品は、明治時代のおもちゃ絵(子供向けの浮世絵)で、学研の付録に付いてきた「切り抜いて組み立てる玩具」のようなものです。当時の子供が遊んで使って捨てられてしまうもので、使わずに残っているのはとても貴重です。
権田保之助も明治期から浮世絵に興味を持ち、大正期において特におもちゃ絵を収集して研究していました。
1915年(大正4年)6月から1920年(大正9年)9月まで酒井好古堂が発行した日本最初の浮世絵研究誌「浮世絵」に、おもちゃ絵に関する論文を投稿しています。浮世絵研究誌「浮世絵」は、小島烏水、坪内逍遥、宮武外骨、三田村鳶魚、石井研堂、桑原羊次郎、星野朝陽、漆山天童、大槻如電、林若樹、内藤鳴雪、淡島寒月、朝倉無聲、岡野知十、武岡豊太、野崎左文、関根黙庵、油井夫山、山中共古、山下詳光、井上和雄、藤懸静也、橋口五葉、相見香雨、島田筑波、永井荷風ほか錚々たる当時の文人、研究者が執筆陣で、多くの人々の注目を集め絶賛を博したようです。今は、浮世絵研究者にとって貴重な資料となっているようです(酒井好古堂HPより)。
さて、オークション当日になり、成行品からオークションが始まりました。
会場には多数の椅子が並べられていて、浮世絵商らしき人、浮世絵専門店のご主人、浮世絵収集家などが座りました。進行役の人が価格を発声し、落札希望者は番号札を上げて落札の意志を示します。落札希望者が複数いる場合は、進行役の人が価格を上げていき、落札希望者が1人になるまでセリが続きます。
私は成行品の古堂「教育水族館蟹亀之組立」をスタート価格(1万円)で落札したいと考えて札を上げましたが、セリが始まって価格が上がったためすぐに札を下げました(苦笑)。落札価格は22,000円でした。
その後もテンポ良くセリが進行し、途中休憩をはさみ3時間後にやっと終わりました(汗)。結局、私は何も落札しませんでした。
オークションでは人気のある作品が高く売れていたように思います。特に北斎、広重の作品は高値で落札されていました。また、新版画と言われる吉田博、川瀬巴水などの大正・昭和初期の作品も高値で落札されていて、新しい絵師の作品も人気があることを知りました。時代によって作品の流行り廃りがあることも知りました。浮世絵というと江戸時代から明治における浮世絵師の作品をイメージしますが、浮世絵はその時代の風俗・文化・流行りなどを伝えるものなので、その後の大正・昭和・平成・令和における浮世絵もあるんだなと思いました。
また、収集家の人は、予算枠と購入品を決めて、それなりの覚悟を持ってオークションに参加している様子でした。どうしても欲しい作品では番号札を下げずに頑張っている様子が至る所で感じられました。酒井好古堂のご主人は、いくらで落札できるかはその時の運・不運で、オークションはゲームみたいなものだと言っていました。
今回の浮世絵オークションを通して、浮世絵に関していろいろと考えました。
今までは、江戸時代から明治のオリジナルの浮世絵しか興味がなかったのですが、復刻版の浮世絵にも興味が出てきたのです。
・オリジナルの浮世絵は色の変化など味がある。ただし高額。
・復刻版の浮世絵は発色が良く、和紙の風合いもある。
・印刷の浮世絵は実物の作品とは色合い、紙質が異なる。
ということを今回の浮世絵オークションで目の当たりにしたのですが、復刻版の浮世絵も悪くないと感じたのです。オリジナルの浮世絵が高額で手が出ないので、妥協している面もあるかも知れませんが(苦笑)。
浮世絵の専門家、研究者にとっては、研究材料としてオリジナルの浮世絵に拘るのかも知れませんが、私のような素人が鑑賞する分には復刻版の浮世絵で十分なようにも思います(ただし、人気のある一部の浮世絵しか復刻されていません)。
また、復刻版の浮世絵はオリジナル作品の初期の色合い(発色)を再現しているので良い面もあると思います。
・オリジナルの浮世絵の色の変化などの味わい
・復刻版の浮世絵の色合い(発色)の良さ
どちらも良いと思いますが、結局はその人の価値観(好み)なのでしょう。